風の歌が聞こえますか

僕に聞こえてくる風の歌を綴ります。

自分で下手なピアノを弾く意味

バッハ=ブゾーニの「来たれ、異教徒の救い主よ」の楽譜を久しぶりに引っ張り出して弾いてみた。誠に僭越ながらこの曲はピアニストの演奏を聞くより下手な自分が弾くほうが感動できる。なぜか考えてみると、この曲はコラール前奏曲で注の部分に「The prelude, the imterludes and the accompmaniment-parts are to be kept well in the background and maintain throughout a quiet, reticent character as a contrast to the melodic part, which must be strongly accented」とある通りにピアニストはメロディ部分をはっきりと弾きそれ以外はかなり引っ込んだような表現をするのが普通だ。僕は音楽を聴く時は小さめのボリュームで聴くことが多いため、鳴っている音全てを聴けていないことも多く、小さい音量で弾かれている部分に十分注意が行き届かない傾向がある。

しかし自分で弾くと全ての声部、全てのパートがヘッドホンを通してよく聴こえる。僕が下手なのでメロディ以外のパートもそれなりの音量で弾いてしまうということもあるのだが、この曲の場合は自分で弾いていると巨大な大伽藍がゆっくり立ち上がってくるように思える瞬間があり、クラシック音楽以外のジャンルでは経験することが少ない「崇高系の感動」が湧き上がってくる。キリスト教徒でない僕でも、この曲が人よりも遥かに崇高な対象に対する祈りや強い願い、思いを表現していることが伝わってくる。

ホロヴィッツの演奏で。随分ロマンティックに崩しているが素晴らしい演奏。どうやったらこんなに美しい弱音が出せるのだろう。

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