風の歌が聞こえますか

僕に聞こえてくる風の歌を綴ります。

最後のレッスンの曲

大人になってピアノを再開してから(中学2年でレッスンにいかなくなり30代で再開した)レッスンに行っていた期間もある。再開してからレッスンではモーツァルト、ベートーベンのソナタツェルニー50番とバッハをやってショパンエチュードを見てもらい、並行して人前で弾く曲を見てもらっていたりした。レッスンで最後にやった曲はラフマニノフ前奏曲 Op.23-5でその楽譜がこれだ。

書き込みや楽譜の色付けは先生がしたもので、僕はこの曲に関しては決して熱心な生徒ではなかったと思う。というのは曲は先生が選定したもので(僕はこの曲は知ってはいたが)あまり好きな曲でもなかったからだ。久しぶりに楽譜を引っ張り出して少し鍵盤でなぞってみると、ゆっくりなぞるだけでヒビの入った親指に負担がかかって痛くなった、笑。まぁとにかく強烈なリズムと和音の連打でピアノを深いところから鳴らす曲なのだけれど、もっとも思い出す限りでは僕は激しい和音のパートよりも、静かでロマンティックな中間部の特に左手の広域アルペジオが苦手だった。ユジャ・ワンの素晴らしい演奏を上げておく。こうやって改めて聴くと良い曲ですね。

youtu.be

この曲が一応上がった後、先生が「次はラヴェルの「水の戯れ」をやりませんか?」と言ったので(水の戯れをやりたくなかった)僕は仕事が忙しくなったことを口実にレッスンをやめてしまったのだった。限られた時間を弾きたい曲に当てたいというのがその時の思いだったけれど、先生は先生で上達してもらうにはこの曲をやってもらいたい(例えばラフのOp.23-5は明らかに揃った和音の素早い跳躍・連打とピアニシモで弾く広域アルペジオの習得を狙っていたと思う)という狙いがあって、恐らくは先生の言に従ったほうが早く上達したんだろうと思う。しかし大人のレッスンは時間に限りもあるので難しいところだ。もう恐らくレッスンに行くことはないだろうなぁ。。

リゲティのエチュード

指の骨のヒビが治らないのでピアノが弾けない。そうなるとピアノについて書くことも今ひとつ出てこないのだが、指が治ろうと治るまいと以前の僕は「弾けもしないピアノ譜を買う」趣味があったので暇つぶしにそんな曲の一つであるリゲティエチュードについて書く。

リゲティは2006年に没した現代音楽家だ。いろいろな曲を書いているがピアノ曲ではピアノのためのエチュードを3巻に分けて書いている。僕は大昔、どこかでリゲティエチュードの演奏を聞いて面白いと思ってSCHOTT社のバカ高い楽譜(もちろん全部買うお金はないので第1巻のみ)を買ったのだった。僕が特に興味を持っていたのは第1番「無秩序」、第4番「ファンファーレ」、第5番「虹」。

第1番「無秩序」は右手は白鍵のみ、左手は黒鍵のみでポリリズムなのでどんどん右手と左手がズレていくというとんでもない曲。ちょっと弾いてみるとわかるが右手と左手が干渉する上に指使いをどうするかが甚だ難しい。まぁ弾かないのでいいんだけど。

第4番「ファンファーレ」は伴奏と旋律が頻繁に入れ替わる曲で8つの8分音符が3+2+3に分割されるリズムで弾く。楽譜を当たってみると音を拾うことはできそうだが、スピードを上げて弾くのは至難だろうなぁ。。まぁ弾かないのでいいんだけど。

第5番「虹」はこの曲集でダントツ綺麗な曲。しかし右手と左手の干渉が半端ない。。まぁ弾かないのでいいんだけど、苦笑。

ということで自分は弾かない(弾けない)けど面白いと思って昔、楽譜まで買っちゃった曲なのでここに書いておく。

youtu.be

この動画で第1番「無秩序」は00:02から、第4番「ファンファーレ」は07:11から、第5番「虹」は10:29から。(一番有名な第13番「悪魔の階段」は32:37からです)

遠征からは帰ったものの。。。

火曜日に遠征から無事帰ってきた。家内は一足早く日曜日に帰宅。
僕のほうは正直な話、鳥が全く出ず散々な遠征だった。渡りの時期の離島ではよくある話なのでどうしようもないのだが、ホオジロ類、ヒバリ類はおろかハクセキレイすらおらずすっからかんだった。離島から沖縄本島に帰って一泊して一人で本島南部の農耕地をレンタカーでぐるぐる回ってみたがこちらもすっからかん。なかなかキツイ遠征だった、苦笑。反対に家内のほうは海が大荒れでおがさわら丸のデッキは半分ぐらいの時間は閉鎖だったようだが、それが幸いしたのかハシボソミズナギドリの大群(1万羽と推定)、ハイイロヒレアシシギの群れ(1000羽程度と推定)と会ったりしてなかなか楽しかったようだ。まぁこういうのは当たり外れがあるのでやむを得ない。

帰宅した翌日、整形外科に行って指のレントゲンを撮った。最近少し痛みが出ているのだが、医師によればまだヒビは完全にくっついておらずまだ相当かかるとの見立て。つまりまだ当分ピアノは弾けないということになる。まぁ来週にはまたフィリピン遠征に行くのでピアノを弾いている暇はないので良いのだが、ずっとこの調子だとツマラナイ。

写真は離島でなんとか会えたツバメチドリ。面白い顔をしている鳥だ。

ツバメチドリ

 

再び遠征へ。

明日から一人で沖縄県の離島へ行く。春の渡りの時期なのでどこかに行きたいと思って家内とこの島に行くことにしていたのだが、家内は途中で気が変わって小笠原諸島の母島に行ってしまった、笑。24時間かけて父島に到着、そこから2時間かけて母島まで合計26時間の船旅だ。途中の航路は海鳥観察を楽しみ、母島でも小型船に乗ってクロウミツバメを探しにいくそうだ。電波の状況が悪いのか殆ど連絡は来ないが大丈夫だろうか。

母島には僕は一昨年に行っているが本当に絶海の孤島だ。なにせ東京から南に1000km以上離れているし船は週に一往復なので母島まで行ったら何があっても6日間は帰ってこれない。家内も父島往復の弾丸遠征(父島に着いたらすぐ帰りの船に乗るというやつ)には昨年夏に行ってるし、今年の8月も僕と一緒に行く予定なのだが、母島にどうしても行きたかったのだ。それはメグロを見るため。世界でも母島でしか見れない固有種だ。

メグロ

さて家内はともかく、僕のほうは沖縄の離島で変わった鳥にめぐり会えたらいいなぁと思っている。来週の火曜日には帰って来る予定だ。

ヘンデル・バリエーションのフーガ

ブラームスの通称「ヘンバリ」または「ヘンデル変奏曲」、正しくは「ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ Op.24」である。指にヒビが入ったおかげでまだピアノが弾けないので作業をしながらYouTubeで音楽を聞いているのだが、たまたまBGMとして以下の動画を見ていた時にアレクサンドラ・ドゥガンがこの曲のフーガを弾いたのだ。

www.youtube.com

僕はこの曲が好きだったのだが、もう30年も前だろうか友人のピアノ弾きが「ヘンバリのあの駄フーガ」と言ったのを聞いてびっくりした。僕はこのフーガも好きだったのだ。改めてどうなんだろうと考えてみた次第。

ネットで世間の評価を見てみると少なくとも「駄フーガ」という評価は見当たらない。改めて聴き直してみると、すごく技巧的でやたらと主題の前半分のフレーズが順行形でも反行形でも拡大形でも目立っているので力ずくに聴こえなくもなく、精緻さや対位法の職人技が(あったとしても)目立たないのではないかな?と思えた。
で、ずいぶん昔に買ったままで探り弾きもしていないヘンレ版の楽譜を引っ張り出して、鍵盤でなぞってみると、、、いや、めちゃくちゃ難しいですわ。ブラームスのソロのピアノ曲ではパガニーニ変奏曲がダントツ難しいと思っていたが、このヘンバリのフーガもとんでもなく難しいです。これだけ技巧的でかつちゃんと4声のフーガだもんねぇ。指が治っても弾こうとは思わないなぁ。。。。

ところで今日は整形外科でレントゲンを撮ってきた。指のヒビは順調に治りつつあるのであとは気をつけて放置するのみとのこと。まだ痺れがあるし鍵盤を押すと少し痛むのでピアノを弾くのは要注意だ。こんな駄文を書き連ねて気晴らしするしかない。

youtu.be

マレイ・ペライアによるヘンデル変奏曲全曲。ジュリアス・カッチェンの名演のCDを愛聴していたがペライアのこの演奏も素敵だ。ちなみにフーガは21:14から。

3月が逝く

3月が明日で終わろうとしている。今月はいろいろなことがあった月だった。
とても大切な鳥友さんが若くして病気で亡くなった。僕たち夫婦の親友といっていい人だったのでショックを受けている。いろいろなところに一緒に行ったし、行く予定だった(来月末からのフィリピン遠征もこの人の発案だった)。渡りの時期に離島に行く楽しさ、海外探鳥の楽しさ、怪しい鳥を見つけ識別するやり方を教えてくれた人だった。僕たちのバードウオッチングの師匠であった人だった。まだまだやりたいことや行きたい場所は山程あっただろうと思うと、悔しくて残念でならない。
人の運命は本当にわからない、と改めて思う。やりたいことは待たずに「今」やるべきなのだ。僕たちにも運命の矢がいつ上から落ちてくるかわからないのだ。

それ以外にも僕は漁船の扉で挟んで指にはヒビが入り(まだ痛みと痺れはあり治療は続く)、家内は岸壁で転んで頭を打ってまだ腫れが残っているし、一昨日からは夫婦揃ってウィルス性腸炎をもらって40℃を超える熱が出て今も体調不良のままだ(お陰で家内の退職のお祝いの食事会は延期になった)。ひとことで言えば「散々な3月」だったのだ。

4月になる。
桜が咲く。
なにかが変われば良いのだが。

 

鳥見のスタイル

バードウォッチングを始めて今年で7年目になるが、自分の鳥見のスタイルが鮮明になってきた。逆に言えばこういうスタイルじゃないのだな、というのが炙り出されて来た感じだ。どういう「スタイルではない」のかというと:

・毎日同じ公園、同じ場所に通って鳥の写真を撮るようなスタイル(ほぼ終日公園にいて鳥が出ない時は周囲の仲間とおしゃべりを楽しむ)

・「どこそこに◯◯が出た」という情報で動き写真を撮るスタイル(だから◯◯が 見れなかったらボウズと言う。「鳥果」とか「撮れ高」という言葉が使われる)

などと言いつつ、僕もマイフィールドというのはあって、週に1、2回はその場所(公園)に行って鳥を探すわけだし(同じ場所で待つわけではないし、お喋りはほとんどしない)、情報を頂いて珍し系の鳥を見たり写真を撮ったりもするのだが、要はそれだけではない部分が一番面白いし大切にしている部分ということだ。

それは何かというと「鳥を探す」ということだ。もともと僕は家内と一緒で野鳥の会の探鳥会が出発点なので「自分で探して見つける」ことが一番楽しい。加えて「まだ見ていない鳥を見たい」という思いも強いので、どういうスタイルが一番楽しいかというと、春・秋の渡りの時期を中心にまだ見ぬ鳥が通り過ぎる可能性がある場所に行って鳥を探すというスタイルだ。これは結構お金がかかったり無駄に終わる時間も多いけれど、自分に合ったスタイルで鳥見をするので一番楽しい。

2月初めに撮ったムジセッカ。カラフトムジセッカでないか随分悩み専門家に相談した所、普通のムジセッカ第一回冬羽との判定。実に残念だった。

オラフソンのPR動画

今朝、近くの公園で軽く探鳥した後で整形外科へ。ヒビの入った親指のレントゲンを撮ったところ骨は順調に回復しつつあるとのこと。親指にはまだ腫れは残っていて曲がりも半分程度。指先から指の腹は痺れたままで感覚がないが、細かい神経がダメージを受けているのでこれは相当時間がかかると医師の見立て。2週間後にまたX線検査を受ける。

ピアノが弾けないかなぁと舟歌を探ってみるが左の親指で鍵盤を押すと痛みもあるし痺れがあってこういう曲を練習するのはまだ無理と思った。少なくとも痛みと痺れが消えないと。しかし何も弾けないのは残念なので最近気になっている曲のPDF楽譜をダウンロードして譜読みしてみた。バッハ(Stradal編)のBWV528オルガンソナタの第2楽章である。

この曲はYouTubeでたまたま出会ったドイツ・グラモフォンのピアニスト:ヴィキングル・オラフソンのPR動画で出会った。この曲、という以上にこのプロモーション動画がとても素敵にそれに惹き入れられたのだ。どんより曇った荒れ果てた極北の土地でピアノの音が静かに響き、住人たちがかまぼこ型の住居から出てピアノのある場所にゆっくり歩み寄ってくるという動画。音楽と絵がマッチしてとても素敵な動画だ。

youtu.be

親指の不具合も忘れてゆっくり最後まで2回も通して弾いてしまった。オラフソンのように弾くのは至難だが、とても美しい曲だ。

遠征ウィークを終えて

オーストラリアから先程帰国。自宅までその日のうちに帰り着かないので、成田のホテルでこれを書いている。それにしても濃い10日間だった。

まず3/9-10の土日は九州で漁船に3回乗ってカンムリウミスズメを観察。激近で存分に観察できて最高だったのだが、船の扉に左の親指を挟んでしまった。爪は真っ黒になり指が腫れて曲がらなくなったので帰ってから整形外科に行ったら、骨にヒビが入っているということで副え木をすることに。

その翌日の3/12にオーストラリア遠征に出発。めちゃくちゃ濃いバードウオッチングを5日間楽しんだ。写真は12000枚ほど撮っただろうか。ここでも小型船にも乗ってレアな南太平洋の外洋性のミズナギドリ類を観察できた。60kmほど沖の大陸棚の切れ目あたりまで出たので船は物凄く揺れたが、海にも落ちなかったし怪我もしなくて良かった。

こういう遠征は楽しいのだが、非日常の極みなので強い中毒性がある。気をつけないとギャンブルと同じで身上を潰すことになりかねない。でも楽しかったなぁ。。今はとにかく指を直そう。ピアノも弾きたいし。

f:id:oddment:20240318213528j:image

写真はセアカオーストラリアムシクイ。ほかにも美しいルリオーストラリアムシクイ、ムナグロオーストラリアムシクイにも会えて良かった。

 

 

 

明日から始まる遠征ウィーク

明日、宮崎県へ一泊二日のバードウォッチング旅行に家内と行く。漁船に乗ってカンムリウミスズメを見に行くツァーだ。日曜の夜に帰ってきて一日置いて火曜日からオーストラリアへ鳥見旅行へ出発、と忙しい遠征ウィークの始まりである。

熱心なバードウォッチャーは退職すると数年間は狂ったように遠征に行く人が多いらしい。仕事をしていて時間が自由にならず思うように動けなかったのが一気に解放されるからだ。(もっとも僕の場合は最後2年間はそれなりに時間が自由にはなったのであちこち出かけていたのだが、病床の父のほうが気になっていた事情があった)。

いつもそうだけど、いよいよ出かける前には気持ちが落ち込んで準備をするのが嫌になる。不思議なもので若い頃のようなウキウキした気分になれないのは不思議だ、苦笑。
でもいざ出かけるとモチベーションも上がるし気分は上がる。明日明後日は一泊二日だからどうということもないが、火曜日からは海外一週間だから結構大変だ。

f:id:oddment:20240308130654j:image