風の歌が聞こえますか

僕に聞こえてくる風の歌を綴ります。

モーツァルト ロンドイ短調 K.511

随分昔にこの曲に出会った。モーツァルトのロンドと言えばレッスンでよく取り上げられるニ長調のロンドK.485が有名だけど、このK.511はもっと取り上げられていい名曲だと思っている。出会いは確かベルギー大使館(文化協会?)主催のミニコンサートだったように記憶している。フォルテピアノの演奏会で仕事の関係で案内が来て期待せずに行ったのだが、その時若い奏者がこの曲を弾いたのだった。長い曲だけどちっとも退屈しなかった。僕は演奏に惹き込まれすぐに楽譜を買った。

それからピアノでよく弾く曲になった。この曲はモーツァルトの死の4年前に書かれた曲だが、哀しみに満ちていて、その中にも静かな明るさ(それは諦念を感じさせるが)もある。多く使われる半音階と転調が不思議な美しさと共に不安定さも感じさせるのだ。


僕がこの曲で一番好きな部分は楽譜で→をつけた部分から最後まで。美しくも不安げに大きく動く左手の音形に重ねて右手でテーマが歌われ、続いて右手と左手が役割を入れ替えて最後の部分に至る。この部分は弾いていてぞっとするほど美しい。

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