風の歌が聞こえますか

僕に聞こえてくる風の歌を綴ります。

亡き王女のためのパヴァーヌその後

最近、ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」を楽しんでいる。3月に校訂版の楽譜を買ってすぐに親指を負傷し6月に入ってからやっと譜読みを再開したのだが、数日に1度気が向いたら弾いてみる程度だったのでやっと最近になって通せるようになってきた体たらくである。しかし前も書いた通り実に和声が美しいので弾いているだけで楽しい。

昔、ピアノサークルのすごく上手な人がこの曲を演奏会で取り上げたら、回りの人たちが「どうしてこんな簡単な曲を弾くんだろう?もっと難しい曲を弾ける人なのに」などと陰口を叩いていたことを思い出す。しかしこの曲、決して「簡単」じゃないと思うのだが。なにせピアニシモ主体の曲でどのパートでもうっかり大きな無神経の音を出したらそれで一巻の終わりである。特に28~33小節と60~65小節の分散和音は難しいと思うのだが。

そういえばネットでラヴェルの高弟のペルルミュテールが校訂した版では、この分散和音の右手の一部を左手で取り右手での旋律をレガートで弾きやすくしているという話を読んだ。以下がペルルミュテール版の28-29小節。この指遣い、とても理にかなっているように思えたので僕もペルルミュテール版の指遣い(手の取り方)に変更することにしてやり直すことにした。

60小節からはさらに難しいと感じる。
この部分の(ラヴェル本人による)オーケストラ編曲の楽譜は以下のようになっており、ソプラノがフルートとヴァイオリン、アルトがハープ、バスがチェロとコントラバスという形になっており全てのパートがppだ。ピアノで弾く場合はソプラノとアルトを右手で、バスを左手で弾くわけだが、ソプラノはppとはいえラヴェルの指示「marques le chant(旋律を出して)」通り弾けばよいが、アルトとバスは微妙なバランスの上で弾き分けなくてはならない。なのでデリケートな音量と音色のコントロールが必要となる。僕の腕では到底簡単にはいかない。

とまぁ僕にとっては難しいのだけれど、これだけ響きが美しいとうまく弾けなくても楽しいのである。春秋社の「ピアノ・レパートリー事典」ではこの曲の難易度は15段階の11で中級の上程度。確かに音を拾うだけならそんな感じかもだが、真面目に音量と音色をコントロールしようとするとずっと難易度が上がるのでは?と感じた次第だ。